旅の途中
2009.10.06 - 10.19
次は私の降りる停留所だ、と思う。多分。
私は私の住んでいた家を知っているし、バッグの中を探せばその家の鍵も持っているはずだ。
バスからの窓越しの景色も、見慣れたものなのだ。おそらくは。
何だろう、この違和感は。
何もかもがどこか違う。微妙なズレ。かすかな不協和音。
長い休みが終わったあとで、初めて登校したときみたいな。
上履きが鳴らす奇妙な音。小さく見える机。
馴れ馴れしく話しかけてくるクラスメイトに、ほんの僅か、身構える。
わたしって、誰なんだっけ?
新宿ロフト うにごはん ライブ

家を出たのは10月6日。午後1時からリハの予定。新幹線からJRに乗り換えて新宿へ。ぎりぎりの到着。スタジオのあるビルの入り口に、すでに何人かの顔が見えた。スタジオで、プランを出し実際にやってみる。短い演奏時間だから、もたつきたくない。構成はシンプルで、スムースに進行できること、を心がけた。もとのプランに、そこで出た意見やアイデアを重ねて、だいたいが決まる。ピカと英子ちゃんが、1セット半のドラムキットを分け合ってふたりでたたいている。かわいい。そして、ふたりのスタンスの違いがよく見える。今回は水玉の曲を1曲。15年以上も歌わなかった曲なのに、歌詞を忘れていない自分に驚いた。
3時にスタジオを出て、歌舞伎町のロフトまで10分ほどを歩く。7人がそれぞれに楽器を抱えたり引いたりしながら、人ごみでいっぱいの街を歩く。当然、途中で数人がはぐれる。
到着したらリハ順は変わっていて、すぐに私たちの番。なぜかというと山本精一が大阪からの電車に乗り遅れたという話。もちろん山本君は最初からリハなんかやる気がない。大友君とデュオだもの。
ピカたちは、スタジオのリハと同じようにドラムスをくっつけてセット。ツイン・ドラムスじゃなくて、ドラム・ツインズ。音を出して、それぞれの音が聴こえるようにモニターを調節してリハはおしまい。即興演奏だから、そのくらいでいい。お互いのことをそれほどよく知らない7人で食事に行く。歩いてすぐの台湾料理屋。大当たり。まったく愛想のないオヤジウェイターが、いける料理を運んでくる。割り勘にしたらひとり千円くらい。どうなってる? こんど宴会に使おう。皆いい気分。
ロフトに戻ったら、大友良英&S.I.M.のセッティング中。やあやあの挨拶。今夜のプログラムは、S.I.M.→うにごはん→吉田達也→大友&山本デュオ。持ち時間は各30分。顔見知りばかりだから、楽屋はおしゃべりに花が咲く。
S.I.M.がスタートし、モニターテレビを楽屋で見ながら出番の準備。
うにごはん、2度目のライブ。思い切りの良い音がヴォイスにかぶる。ハードコア・インプロ・バンド。波しぶきと、吹き荒れる風。波間に虹色の泡が見える。高波にもまれる船。ぎしぎしと甲板が軋む。雷光。火の手があがって、あっという間のエンディング。
全部が終わって、地引さんやコンクリーツの清水さんも交えてお疲れさんの乾杯。ひとしきり飲んでしゃべって。植村君はいつだって酒のサカナ。
それじゃまたと手を振って、Mと帰り道でラーメンを食べながらしゃべり続ける。こんな夜は眠れない。明日からヨーロッパ。(つづく)


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